アウトソースとは?どこまで外注できる?意味、定義、メリットを解説
「業務が増えたが自社人員では対応できない」
「新しい業務を実施したいがノウハウがない」
そんな時に役に立つのがアウトソース。つまり業務の外部委託です。
近年ではランサーズなどのクラウドソーシングの仕組みの発達により、フリーランス含めた外部リソースの調達手段も容易になってきております。
この記事では、アウトソースをどのように活用するべきか?とその活用メリットをまとめました。
Contents
こんな方におすすめ。
以下のような方に向けて記事を書いています。
- アウトソースについて概要を知りたい
- アウトソースを活用するメリットを知りたい
- アウトソースを活用できる業務の見分け方を知りたい
アウトソースとは?
アウトソースとは「人的資源を外部から調達すること」の総称です。
外部人材に委託することで、自社の業務を遂行することを指し、主に給与計算や経理などのバックオフィス機能、またはシステムの保守・運用などでよく活用されます。
専門機関による市場調査によると、アウトソースの市場は近年伸び続けていることがわかります。
活用拡大の背景として、SaaS系のサービスのデータセンター運用ニーズの高まりや、働き方改革の流れによる生産性向上ニーズの高まりがあげられるようです。
アウトソース活用のメリットは?
次に、アウトソースのメリットを整理してみましょう。
大きく、以下の三つがメリットとして挙げられます。
- 人件費削減
- 人件費の変動費化
- 付加価値の高い業務へのリソースの集中
それぞれひとつづつ確認していきましょう。
人件費削減
シンプルなメリットですね。
単価が安いアウトソース先に業務を委託することにより、人件費を削減します。
純粋に単価を下げるという側面だけでなく、新規人員の募集・雇用などの副次的なコストの削減効果も見込むことができます。
また、業務を受託する企業は基本的にその業務のプロです。当然社内で効率的に業務を回す仕組みを整えていたり、専門性の高い人材を擁している可能性が高いです。自社でやると2.0人月分の業務を受託業者が1.0人月で回せれば、自社単価がそう変わらなくても人件費を下げられることは十分可能です。
しかし、当然ながらアウトソースを活用すれば、必ず人件費削減に繋がるというわけではありません。
委託先とのすり合わせや管理などの手間も発生しますのでそこも含めた検討が必要でしょう。
人件費の変動費化
正社員の数を急に減らすことは難しいので、人件費は基本的に固定費です。
そして、変化に柔軟に対応できる企業になるためには固定費の削減が欠かせません。
固定費と変動費については以下のような定義があります。
- 変動費:売上の増減に依存して増減する費用
- 固定費:売上の増減に依存せずに発生する費用
売上が上がれば上がるほどかかるコストが変動費、売上が上がらなくても発生するコストが固定費です。
飲食店を例にあげると、例外もありますが以下のように分類することができます。
人件費に関しては、一般的にはアルバイト人件費は変動費、正社員人件費は固定費扱いにすることが多いです。数をコントロールしづらい正社員に比べ、アルバイトの労働時間は売上に応じてある程度調整ができるという考え方です。
では固定費が高止まりがなぜ経営上の課題になりうるのか。
下図で説明しています。
固定費率が高いと、売上変動の利益率へのインパクトが大きくなり、赤字リスクが高まります。一方で固定費率を低くすることができれば、売上高が多少減少しても赤字転落をしにくい体質になることができます。
このような理由から、リスクが高い新規事業立ち上げなどにおいてもアウトソースが活用されることがあります。
付加価値の高い業務への自社リソースの集中
三つめは付加価値の高い業務への自社リソースの集中です。コスト削減というよりは、むしろいかに付加価値を生み出すかという考え方になります。
業務は基本的に「コア業務」と「ノンコア業務」の二つに分類することができます。
コア業務はその企業の付加価値の源泉となる業務。業種により異なりますが、例えば化学系企業であれば研究開発、おかしメーカーならば商品企画、百貨店であれば仕入れなどがコア業務にあたります。
コア業務は企業の競争力の源であり、コア業務にどれだけ自社のリソースをかけられるかが人材配置のキモとも言えます。
ノンコア業務はどのような業務でしょうか?
コア業務の定義の逆は「企業の付加価値の源泉ではない業務」です。
具体的には、給与計算や備品の購入、契約書の作成や経費計算など、会社の付加価値に大きく関与しない業務です。
ここで理解しておきたいのは、「ノンコア業務は重要ではない業務」とは言えないということです。反対にノンコア業務をいかに効率的に回すかで大きなコスト削減が狙える可能性があります。
各業務を自社と外注含めて誰が実施するのが最適なのかを考えるのが重要です。
ノンコア業務をアウトソースして、自社人員を付加価値の高いコア業務にシフトさせ、同時にアウトソース事業者のノウハウを借りてノンコア業務を効率化する。
これが実施できると人材配置と業務の効率化につながるはずです。
得てしてノンコア業務は単純労働であることも多く、アウトソースの活用は自社社員のモチベーションの向上にもつなげることもできます。
どんな業務をアウトソースするべき?
アウトソースを活用してもよい業務とあまり活用すべきでない業務の切り分けは、前項でも触れましたがその業務がコア業務かノンコア業務か?が一つの基準です。
企業の付加価値に大きく関与しないノンコア業務であれば積極的にアウトソースを活用していくのが良いでしょう。
具体的には経理、人事などのバックオフィスの定型業務や、物流、ネット広告の最適化など他業界でもノウハウが変化しない領域などがノンコア業務に当たります。
ただし、業務の属人化が進んでいる状態ではなかなか外部化が進まない場合も多いので注意が必要です。業務の棚卸と整理という思わぬ手間があるかもしれません。
アウトソース活用のデメリット
ここまでアウトソースの良いところを中心に述べてきました。
ここからはデメリットについても触れていきましょう。
- 社内にノウハウが蓄積されない
- コストが高まる場合もある
- ガバナンスが弱体化する
- 情報漏洩リスク
社内にノウハウが蓄積されない
基本的にアウトソースした業務のプロセスは当然ながらすべて委託先が管理することになります。
自社が関与しなくなる領域が増えてしまうと、業務の理解が浅くなり、ノウハウが蓄積されない形になります。
一見ノンコア業務であれば問題は薄いように見えます。しかしこの現象による一番の不具合は「ベンダーロックイン」です。委託先のみが自社の業務ノウハウを持っている状況になってしまうので、委託先を変える選択肢や、再び内製化する選択肢が取りづらくなります。
この状況は委託先の立場を強固なものにし、その結果として価格交渉などで不利になる恐れがあります。
外注時の業務要件をしっかりと内部ナレッジとして蓄積しておく、業務の標準化を進めておくなどの対応が必要です。
コストが高まる場合もある
当然ながらすべてのケースでコストが安くなるわけではありません。
自社のプロセスに強みがある場合や、自社の人件費単価がそもそも高くない場合などは人件費削減の効果はあまり望めない可能性が高いです。
ガバナンスが弱体化する
経営における企業の統制を「ガバナンス」と呼びます。さまざまな不正や、経営の意図との乖離を逐次モニタリングし、企業の働きを正しい方向に導くのがガバナンス機能です。
しかしながらアウトソースによって業務を外に出してしまうと、業務遂行が不透明になりがちです。
不透明なプロセスは品質管理の低下の要因になってしまいます。
対策としては、委託先とのサービスレベルや品質の厳格な取り決め、密なコミュニケーション体制の構築などがあります。
情報漏洩リスク
情報漏洩も気を付けるべきリスクです。
業務の実行に個人情報や企業の機密情報を取り扱うケースも多くあります。
個人情報や機密情報の取り扱いについて、両社間でいくら取り決めを交わしたとしても、他社のコントロール下に渡ることは事実です。そこをしっかりと考慮し、万が一の場合も考慮した上で業務をアウトソースするかどうか判断しましょう。
また、委託先の企業についての調査も非常に重要です。
「とりあえずアウトソース」は大体失敗する。
ここまで述べてきたように、アウトソースは企業にとって大きな武器になる可能性があります。
しかしながら、闇雲なアウトソースをしても必ず成功するわけではありません。
では、どのようなことに気を付ければアウトソースをうまく活用することができるのでしょうか?
その鍵を握るのが業務の標準化と清流化です。
業務の標準化
業務を外に出すときに壁となるのが属人化している業務です。
「商品マスタ管理はAさんしかわからない」や「給与計算はBさんがつくったエクセルでやっていて、仕組みはBさんしかわからない」というような業務が人についている状態を一般的に「属人化している」と言います。
業務を外に出す場合、当然ながらその業務は誰でも回せる状態にしておくのが理想。なので、属人化した業務を紐解き、どんなトリガーで始まり、どんなインプットをもとに、どんなプロセスを経て、どんなアウトプットを出すのかといった情報を整理しなければなりません。
下ごしらえの期間は場合によっては長くかかります。業務を外注する際の計画の中に盛り込んでおく必要があるでしょう。
業務の整流化
アウトソースによる効率化を最大限活かすためには、業務の整流化も重要です。
整流化のポイントは「いかにプロセスをまとめて外注するか」です。
前提として、社外とのコミュニケーションコストは社内よりもずっと高いということを踏まえなければなりません。
自社と委託先とのコミュニケーション回数を最小化するために、業務の流れを組み換えたり、改善したりする必要があります。これも、標準化と同じく下ごしらえとして必要となるケースがあります。
つまるところいくら定型業務であろうとも、大量の仕事を外注するのは大きな労力を要します。
何よりそもそもの業務の整理が必要となってくるので、アウトソース事業を営む企業はコンサル機能を備えているところも少なくありません。
まとめ
ラップアップとして本記事の情報をまとめておきましょう。
- アウトソースは外部に業務を委託すること全般を指す
- アウトソースのメリットは以下の3つ
- 人件費削減
- 人件費の変動費化
- 付加価値の高い業務へのシフト
- アウトソースすべき業務は基本的に付加価値を生みづらいノンコア業務
- アウトソースのデメリットは以下の4つ
- ノウハウが蓄積されない
- コストが高まる場合もある
- ガバナンスが弱体化する
- 情報漏洩リスク
- 実施のコツは業務の標準化と整流化であり、下ごしらえが必要
自社のリソース戦略は経営戦略の中でも重要です。
アウトソースも踏まえてリソース配分が最適になるように、今一度検討を始めてみてはいかがでしょうか。